毒親の後遺症って具体的にどんな状態ですか?生きづらさを感じるのに、人に相談しても甘えと言われて悩んでいます。
この記事ではこんな疑問を解決します。
しん | 心理カウンセラー
心理カウンセラー。過去のカウンセリング実績500件以上。自身の毒親育ちの経験を活かし、毒親の克服方法やアダルトチルドレンの改善などを中心に、「読者の悩みの根本的な解決」を目指し発信しています。
こんにちは、心理カウンセラーのしん(@psynote__)です。
先日、こんなツイートをしました。
毒親が子供に与えた毒は、子供時代よりもむしろ、大人になって強く現れます。
いわば「毒親の後遺症」ですね。
この記事ではそんな毒親の後遺症について、詳しく解説していきます。
毒親の後遺症、人生に与える悪影響【7つ解説】
毒親に育てられた子供は、多かれ少なかれさまざまな「生きづらさ」を抱えて生きることになります。
簡単にですが、よくある例を7つ紹介するので、あなたに当てはまるものがないか探してみてください。
- 自己肯定感や自尊心が低い
- 自分のやりたいことが分からない(主体性がない)
- 0か100の黒白思考、完璧主義
- 依存癖(アルコール、ギャンブル、恋愛など)
- 拡大解釈や被害妄想がつよい
- 人の顔色をうかがってしまう
- 罪悪感に悩みやすい
順に解説していきますね。
1.自己肯定感や自尊心が低い
親から肯定されず、いつも否定されて育った子供は「愛されている」という実感を持てません。
そのため、自己肯定感や自尊心が低くなりやすく、自分を好きになったり自分を大切にすることができません。
2.自分のやりたいことが分からない(主体性がない)
大人になって
「自分のやりたいことが分からない」
「自分の意見を人に伝えるのが怖い」
「つい人の意見に流されてしまう」
このように主体性が持てないのも、毒親育ちの人によく見られる後遺症のひとつです。
親にやりたいことを禁止され、親が望む理想の子供を演じ続けた結果、自分のやりたいことが分からなくなってしまった状態です。
3.0か100の黒白思考、完璧主義
親に失敗を許されず育った子供は、0か100かといった黒白思考や完璧主義に陥りがちです。
なんでも100(つまり完璧な状態)でなければならないという思い込みが強く、必要以上に自分を追い込んだり、逆に
「完璧にできないならやる意味がない」
と、無意識に努力を放棄してしまうこともあります。
4.依存癖(アルコール、ギャンブル、恋愛など)
毒親に育てられた大人はアルコールやギャンブル、恋愛など。
なんらかの嗜癖(自分の不利益や不都合となっているのに、依存の対象を手放せず反復し続ける状態)にのめり込むことがあります。
毒親自身がなんらかの依存状態に陥っていたことも多く
「気がつけば自分も親のようになっていました」
と悩みを相談される方も少なくありません。
5.拡大解釈や被害妄想がつよい
毒親育ちは他人からの小さな否定を過剰にとらえてしまう、思考のクセがあります。
「自分が否定された」と感じると、ひどく攻撃的になったり、逆にこの世の終わりかのように悲観的になります。
・仕事が長続きしない
・人間関係のリセット癖
・依存的な恋愛を繰り返す
などなど、公私においてさまざまなトラブルに繋がりやすい後遺症と言えるでしょう。
6.人の顔色をうかがってしまう
親に怒鳴られないため、叩かれないため。
家の中でいつも親の顔色をうかがい、ビクビクして生活していた毒親育ちは、いつしか他人に対しても同様の行動を取るようになります。
「人を不快にさせてしまうこと」を過度に恐れているため、人との付き合いが表面的なものにとどまりやすく、孤独感が強まる原因にもなります。
7.罪悪感に悩みやすい
「お前が悪い!」
「なんてこんなことも出来ないんだ!」
このような言葉で責められ育った毒親育ちは、あらゆることに対し「自分が悪いのかも…」と罪悪感を抱くようになります。
他人の責任を自分の責任のように考えてしまうため、気苦労が多く、他人に都合よく使われてしまうこともあります。
なぜ「後遺症」となるのか?3つの根本的要因をさぐる
子どもは最も身近な存在である親から愛情を受け取り、人との付き合い方の土台を作っていきます。
ですが、毒親育ちはその土台が全くないか、ほぼ崩れている状態。
毒親の後遺症の内容は人によって異なりますが、私が「後遺症の根幹」と考えている3つの要素についてお話します。
生きづらさの問題の根幹を知ることで、あなたが今後自分のなにを改善していけばいいのか明確になるはずです。
あらゆる後遺症の根幹にある要素として、私が考えているのは以下の3つです。
- 「信じる」という行為への拒否感
- 自分と他人の境界線があいまい
- 「こうあるべき」という思い込みが強い
順に解説していきます。
1.「信じる」という行為への拒否感
後遺症の根底のひとつ目として挙げるのが「信じる」という行為に拒否感があるということです。
これは単に他人を信じられるかどうかといった話ではなく、自分自身のことを信じられるかどうかも含んでいます。
本来、一番の味方であるはずの親に十分な愛情を与えてもらえず、傷つけられて育った人が
「他人は自分を傷つける存在で、決して信用するものではない」
と考えてしまうのは残念ながら仕方のないことです。
人を信用することができない最大のデメリットは「常に孤独と隣あわせの状態になる」ということです。
「どうせいつか自分は捨てられる」と考え、人との関係を自分から壊してしまう場合もありますね。
孤独は依存を生みます。
依存の形がアルコールなのか、薬物なのか、恋人なのかは人によって異なりますが、依存は繰り返せば繰り返すほど「自分らしい人生」を遠ざけていきます。
2.自分と他人の境界線があいまい
ふたつ目は「自分と他人の境界線があいまい」です。
これは簡単に言うと
「自分は自分」「他人は他人」という考え方ができなくなっている
ということです。
たとえば、あなたは過去にこのように感じたことはないでしょうか?
もう少しわかりやすくするため、これらの特徴を言葉に置き換えてみました。
「自分がこう思うのだから、相手もきっと同じように考えているだろう」
「相手がそう思うのであれば、それが正しいのかもしれない」
「自分の意見が絶対に正しいのだから、相手もそれに従うべき」
自分と他人の境界線があいまいになっていると、無意識に自分の問題を相手に押し付けてしまったり、反対に相手の責任を背負わされたりします。
ひとつ、境界線があいまいなことで起こる具体例を挙げてみましょう。
毎日欠かさず連絡をしてくれる恋人から、丸一日連絡がなかったとします。
このとき境界がハッキリしている人の場合
「体調が悪いのかな?」
「仕事が忙しいのかな?」
と考え、心配しつつも連絡を待つか、もしくは軽い連絡にとどめるのが普通です。
ですが、他人との境界線が曖昧な人の場合
「本当に好きなら連絡くらいするはず」
「嫌われたのかもしれない」
「返信があるまで何度も連絡しよう」
などと考え、その後、強い不安や焦燥感に襲われます。
前者は相手の立場(境界)を踏まえた上での行動ですが、後者は自分が抱える不安(問題)を相手に無理やり押し付けることで、問題を解決しようとします。
「認められたい」という潜在的な欲求が、自分と他人の間の境界線をあいまいにします。
この例はあくまで一例で、境界線のあいまいさは、この他にもさまざまな人間関係のトラブルを引き起こします。
「こうあるべき」という思い込みが強い
後遺症の根幹の3つ目は「こうあるべき」という思い込みの強さです。
黒白思考や完璧主義は、毒親育ちの後遺症の中でも特にダイレクトに人生に悪影響を与えます。
毒親育ちの方が黒白思考や完璧主義を持ってしまうのは、言うまでもなく
親に完璧であることを強要されていたから
です。
親の望むとおりに行動できるのが普通、もしできなければ暴言や暴力で痛めつけられるような環境だったのではないでしょうか。
そんな環境で育ったあなたは、いつしか自分に高いハードルを課すようになります。
ですがその中には実現不可能な目標も多く、「達成できなかった事実」があなたの自己肯定感を下げ、次の行動の意欲を失わせるといった、負のループにハマっていたのではないかと思います。
また、あなたは親の望む人生を送ることが、自分の運命だと感じているかもしれませんね。
「孫を見せて親を安心させないといけない」
「安定した仕事に就いていないといけない」
「親に寂しい思いをさせないようにしないといけない」
具体的にはこうしたものです。
ですが実際のところ、人生において「こうでなければならない」なんてことは、ほとんどありません。
もし今あなたが「自分らしい人生を送ることができていない」と少しでも感じているのであれば、あなたは親が押し付けた「こうあるべき」の呪いにかかったままの状態です。
【事実】あなたの親は欠点だらけの人間だった
あなたの親は欠点だらけの人間だった。
この文章を読んでモヤッとしたり、居心地の悪さを感じたあなたは、親に対する罪悪感が抜けていない状態です。
「親も決して愛情がなかった訳ではないと思う」
「つらい思いをしたのは事実だけど、衣食住やお金の面で困ることはなかった」
「自分のためを思って厳しかった部分もある」
毒親でも時には子どもに対して優しく接したり、寛大に振る舞うことがあります。
毒親との記憶の中で「優しい親」が存在したのは事実ですが、今もっとも目を向けるべきは
あなたが今もまだ、苦しんでいる
ということです。
自分の気持ちや感情を大切にできず、自然と「親がどう思うか」を考えてしまっている状態です。
また、世間の「親を大切にしない人=ダメな人」という認識もあなたの罪悪感を強めているかもしれません。
ですが、あなたの親はあなたに大きすぎるほどの後遺症を与えたということ。
まずは、自分の苦しみをありのまま認めてあげることが大切です。
「なんでも親の責任にするな!」という反論は正しくない
毒親の後遺症を抱えている人に対して
「もう家を出ているのだから関係ないだろう」
「親だって必死に子育てしていたことを理解しなさい」
「いい歳していつまでも親のせいにするな」
このような反論をする方が、現実、ネットを問わず一定数います。
まず大前提として、家を出ただけでは、毒親の呪縛は解けません。
繰り返しになりますが、小さな頃の親との関わり合いは人間関係の構築や、その人の考え方の基礎を作り、その後の人生に大きな影響を与えます。
親元を離れただけで、考え方や生き方を変えられるのであれば、「毒親」という言葉が認知されることはなかったでしょう。
また、いくら親が頑張って子育てしたと主張しても、それは親や他人の主観であって、あなたが傷ついてきたという事実は変わりません。
これらの反論で一点だけ納得できる部分があるとするならば
「一切の努力を放棄して親のせいにすること」
はカウンセラーである私も正しくないと考えています。
もちろん、自己肯定感の低さや、成功体験の少なさが原因で、努力が続かないことは毒親育ちにはよくあることです。
ですが結果はどうあれ、自分のために努力しているか、していないか。
この0か1には、本当に大きな違いがあります。
親に傷つけられた過去は変えられません。そして、毒親がある日突然「理想の親」になることもありません。
過去も現状もありのままに受け入れて、少しづつでも自分のために動き出しか、人生を良くする方法はないのです。
もっとも、この記事をここまで読んでいるあなたは、言うまでもなく自分のために前向きに動こうとしている方でしょう。
毒親の後遺症を軽くするためにはどうすればいいのか?
まず、毒親の後遺症を軽くするにあたって
これらの要素は一切関係ありません。
毒親の後遺症を改善させる上で大切なのは、親から「人生の主体性」を取り戻すことで、それは人生のどのタイミングからでも実行可能です。
ただし立場によってアプローチ方法は少し変わってきます。
ケーススタディ:現在も毒親と同居している方の場合
親から「人生の主体性」を取り戻すにあたって、絶対にやってはいけないのは
などなど、親との関係をいきなり大きく変えようとする行動です。
たいていの場合、こうした行動を取ると親も感情的になり、親はあなたを言い負かそうとしたり、傷つけようとします。
大切なのは「感情を徹底的に抑えること」です。
まずは日常の話からでも構わないので、一切の感情を捨てて「私はこう思う」と親に自分の意見を表明してみてください。
簡単なことのように思えるかもしれませんが、親に対する罪悪感が強い人ほど居心地の悪さを感じるはずです。
ここで重要なのは、親に反論されても絶対に感情的にならないことです。
親がなにを言おうとも「あなたはそう思うんですね」と黙って心のなかで受け流しましょう。
まずは小さなことから「自分と親は違う人間」ということを、自分自身に対して行動で納得させていく。
焦る気持ちは大変よく理解できますが、毒親の解毒は一歩一歩、着実に進める必要があります。
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今回は毒親の後遺症について解説しました。
一番最悪なケースは、自分の親が毒親だと気がついていないケースですね。
自分がなにに苦しんでいるのか。どうすれば今の苦しみから逃れられるのかが全く分からず、精神を病んでしまう方は少なくありません。
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今回は以上です。
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