恋人の自慢話がやたらと多い。理想像を押し付けてくる。こちらの話を聞いてくれない。
なのに、少しでも否定すると急に不機嫌になったり、黙り込んだりする。
「自信があるように見えるのに、なぜこんなに脆いんだろう」。もしあなたがそんな違和感を抱えているなら、恋人は回避依存症の「ナルシストタイプ」かもしれません。
こんにちは、心理カウンセラーのしん(@psynote__)です。
ナルシストタイプは、パッと見て回避依存症と分かりにくいタイプのひとつです。
性格の一部だと捉え、結婚後に「なにかがおかしい」と気づいて調べた結果、回避依存症にたどり着いたという相談者の方も珍しくありません。
この記事では、ナルシストタイプの特徴、行動の裏にある心理、そして振り回されないための付き合い方について、カウンセリングでの経験をもとにお伝えしていきます。
「自信家なのに打たれ弱い」。ナルシストタイプの恋人に感じる矛盾
ナルシストタイプの恋人に対して、多くの方が感じるのは「矛盾」です。
自信に満ちているように見えるのに、ちょっとした指摘で大きく動揺する。自分の話はたくさんするのに、こちらの意見には耳を貸さない。プライドが高いのにメンタルが驚くほど脆い。
「この人、一体どっちが本当の姿なんだろう」
そう感じたことがある方もいるかもしれません。
結論から言うと、どちらも本当の姿です。ただし、多くの人が想像する「本当の自信家」とは根本的に違います。
ナルシストタイプによく見られる6つの行動パターン
実際にカウンセリングで「恋人がこういう行動を取る」と相談を受ける中で、特に頻度の高いものを6つにまとめました。
- 生活のあらゆる面で「自分の理想」を恋人に押し付ける
- 人から見下されたと感じると、激しく怒る
- 自信家に見えるのに、否定されると途端にメンタルが崩れる
- 批判や指摘に対して極端に敏感
- 自分は他の人より優れていると信じている
- 自慢話や、自分を大きく見せるような話が多い
この行動パターンに共通しているのは、「自分が他人からどう見られているか」が常に思考の中心にある、ということです。
そして、ナルシストタイプの人にとって最も恐ろしいのは「恥をかくこと」。自分の弱点が人にバレることは、人生の終わりくらいに感じている。だから外から見ると、高い自尊心を持った自信家に映るのです。
中にはその自尊心の高さと相まって、仕事で大きな成功を収める人もいます。
ですが、成功の裏にある動機は「成長したい」ではなく「恥をかきたくない」。この違いが、恋愛関係において問題を生みやすい理由です。
たとえば、こんな場面に心当たりはないでしょうか。
「今日、会社でプレゼンしたんだけど、やっぱり俺のが一番良かったと思う」と自慢話を始める恋人に「でも、○○さんの提案も良かったんじゃない?」と言った途端、急に黙り込む。翌日まで口をきいてくれない。
あるいは、「もうちょっと片付けてくれると助かるな」と伝えただけなのに「俺のやり方に文句があるなら全部自分でやれば?」と返される。
ナルシストタイプの恋人との日常では、こうした些細なやりとりが積み重なります。
「自信」の裏にあるもの。歪んだ自己愛が生む強がり
ナルシストタイプの言動を理解するカギは、「自己愛」という心理にあります。
自己愛とは、簡単にいえば「現実の自分」ではなく「理想の自分」に酔ってしまう心理です。
「自分には才能があってなんでもできる」
「自分は有能で、人から愛される存在に違いない」
こうした根拠のない自信を強く持ち、他人に対して見栄を張るようになります。
一方で、人からの批判には非常に弱い。批判を受けると「批判してくる相手」を拒絶することで、自分の理想の世界を守ろうとします。
恋人に対しても同じで、少しでもプライドに触れる言葉を言われると、黙り込んだり、逆に攻撃的になったりする。
この見栄を張る行動の延長として、ナルシストタイプは嘘を重ねることも多い傾向があります。
「すごい自分」を維持するために、事実を脚色したり、実績を大きく見せたりする。本人にとっては嘘をついているという感覚よりも、「理想の自分を守っている」という感覚に近いのです。
なぜナルシストタイプになるのか。小さな頃の環境が作る心の歪み
「自分はすごい!」「なんでもできる!」という気持ちは、小さな子供であれば誰もが一度は通る道です。この心理は「幼児的万能感」と呼ばれていますね。
これ自体は健全な成長の過程であり、成長するにつれて周囲との関わりの中で穏やかに落ち着いていきます。
「あの子は運動が得意だけど勉強は苦手」
「自分は勉強はいまいちだけど運動は大得意」
こうやって自分と他人を比べ、「できること」「できないこと」をありのまま受け止められるようになるのが、通常の成長です。
ではなぜ、ナルシストタイプの人はその過程を通れなかったのか。
原因は大きく分けて二つ、小さな頃の両親との関わり方にあります。
愛情が不足した環境で育ったこと
愛情が足りない環境で育つと、子供の中に「自己肯定感」が育ちません。
「自分は誰にも愛されていない」
「自分には価値がない」
こうした気持ちを幼い頃から強く感じてしまうと、他人と自分を健全に比較する力が身につかないのです。
弱い自分から目を逸らすために、
「自分には才能がある」
「自分は特別な存在だ」
と信じ込むようになる。物心がつく前に根づいたこの感覚は、大人になっても簡単には消えません。
カウンセリングの経験から言うと、ナルシストタイプの8割以上は「親の愛情不足」が背景にあると感じています。
過保護・過干渉な環境で育ったこと
過保護や過干渉な環境も、ナルシストタイプの人格を作る原因のひとつです。
ただし、「甘やかされて育った」こと自体が問題なのではありません。
問題は、親の「子供の役に立ちたい」という気持ちが、子供の自発性や自立心を奪う「制約」になっていたことにあります。
自分のやりたいことを否定され続け、「あれをしなさい、これをしなさい」と言われるうちに、子供は「自分の意見やニーズには価値がない」と感じるようになります。
結果として、愛情不足のケースと同じく「自己肯定感」が育たない。その空白を埋めるように、歪んだ自己愛が膨らんでいくのです。
「恥」への恐怖がナルシストタイプの行動を支配している
ナルシストタイプの人は、あらゆる行動の根底に「恥をかくことへの強い恐怖」を抱えています。
たとえば、あなたがあるスポーツのプロ選手だとします。試合で「初心者でもしないミス」を人前で晒してしまったら、どう感じるでしょうか。プロとしてのプライドがあるからこそ、小さなミスが強烈な恥として突き刺さりますよね。
ナルシストタイプにも同じことが起きています。
「自分は優れた存在だ」という理想を強く持っているからこそ、その理想と現実のギャップを突かれることが耐えられない。
プライドが高くなるほど恥への恐怖も強くなり、それを隠すために人に対して過度に攻撃的になったり、拒絶的になったりする。恋人に対しても、「自分が上でいたい」という気持ちが無意識に出てしまいます。
相談者の方から「彼が怒る理由がずっと分からなかった」という声をよく聞きますが、多くの場合、怒りの裏にはこの「恥の感覚」が隠れています。
そして、この「恥を隠す」行動は恋愛面にも表れます。
たとえばナルシストタイプの人は、恋人に対して嫉妬を感じていても、それを認めず強がって隠すことがあります。なぜなら、嫉妬は「自分が劣っている」ことを認める感情だから。
素直に「寂しい」「不安だ」と言えない、その代わりに不機嫌になったり、相手を責めたりするのです。
独裁者タイプ・搾取者タイプとの併発。関係がさらに複雑になる理由
多くの場合、ナルシストタイプは「独裁者タイプ」の特徴もあわせ持ちます。
独裁者タイプが取る行動、たとえば
- 常に自分を中心に考える
- 人に命令するが、反論されると激しく怒る
- 話し方、食事、掃除など日常の小さなことにまで口を出し、自分の理想を押し付ける
こうした恋人と主従関係を作るための言動は、ナルシストタイプの言動と重なり合います。
恋人に対して「モラハラ(独裁者)」をしながら「自分はすごい人間だ(ナルシスト)」という認識を植え付けることで、恋人に
「自分には価値がないのに、この人は付き合ってくれている」
「少しくらい辛くても我慢しないと」
「これくらいの問題、どこの家庭でもあること」
と思わせてしまうのです。
また、カウンセリングの経験から言うと、搾取者タイプとの併発も少なくありません。「自分はすごい人間だ」と見栄を張りながら、実際の生活は恋人のお金や労力に依存しているというケースが過去にありました。
ナルシストタイプの恋人に振り回されないために
率直にお伝えすると、ナルシストタイプは他のタイプと比べて性格が改善される可能性が低いタイプです。
これは10年以上カウンセリングを続けてきた中での実感でもあります。これには明確な理由があり、ナルシストタイプの人は「自分に問題がある」とは考えないから。
たとえば回避依存症の脱走者タイプであれば、程度の差はあれど「自分が恋人を避けてしまっている」ことを自覚できる場合があります。
しかしナルシストタイプは、自分の言動が相手を傷つけている自覚がほとんどないのです。
その前提を踏まえた上で、ナルシストタイプの恋人に振り回されないために意識できることが二つあります。
恋人のプライドを不用意に傷つけない
何か伝えたいことがあっても、それが恋人のプライドに触れる可能性があるなら、伝え方を工夫した方が関係は安定します。
「あなたは間違っている」ではなく、「私はこう感じた」という形にするだけで、相手の受け取り方は大きく変わります。
やりがちな失敗として、「あなたは自信家に見えるけど、本当は自己肯定感が低いんだよね」と恋人に直接伝えてしまうケースがあります。
こちらとしては理解を示したつもりでも、ナルシストタイプにとっては「弱さを見透かされた」ことになり、激しい拒絶反応を引き起こします。
理解は自分の中に留めておく方が関係は安定します。
恋人の言動を真に受けすぎない
自慢話、理想の押し付け、見栄。こうした言動に対して、ひとつひとつ真剣に向き合い続けると消耗します。
「この人は今、自分の弱さを隠そうとしているんだな」と一歩引いて見る癖をつけると、必要以上に心を乱されなくなります。
ナルシストタイプの人は「自分はすごい」と繰り返すことで自分を守っていますが、その言葉に影響を受けて「自分にはなにもない」と感じてしまうことがあるかもしれません。
でも、それは相手の心の問題であって、あなたの価値とはなにも関係のない話です。
ナルシストタイプの恋人との関係で、自分を見失わないために
ナルシストタイプとの付き合いは、どうしても「相手に合わせる」形になりがちです。
プライドを傷つけないように気を遣い、理想の押し付けを受け流し、自慢話を聞き続ける。その中で、自分の気持ちや意見を後回しにしてしまう方は少なくありません。
そして、交際の初期、恋人の自信に満ちた姿に惹かれた方もいるかもしれません。
関係が深まるにつれて見えてきた「脆さ」や「強がり」は、あの頃と別人になったわけではなく、近づいたからこそ見えるようになった裏側です。
この記事では、ナルシストタイプの行動の裏にある「自己肯定感の低さ」と「恥への恐怖」、そして振り回されないための付き合い方についてお話ししました。
ただ、「相手に合わせること」と「自分を犠牲にすること」は違います。その線引きは、一人で考えていても見えにくいものです。
メルマガでは、「恋人の言動にどこまで付き合うか」「自分の気持ちを後回しにしない基準の作り方」など、記事では踏み込みきれなかった具体的な整理の手順を共有しています。

