「回避型」や「回避依存症」という言葉をよく耳にしますが違いや使い分けが分かりません。詳しく教えて欲しいです。
この記事ではこんな疑問を解決します。
- 回避型愛着スタイルは恋愛だけに限らない。人生全般において他者との感情的な距離を保ち、親密さを避ける。
- 回避依存症は恋愛に限定され、相手に依存しながらも親密さを避け「矛盾した行動」を繰り返すのが特徴。
- 「回避依存症」という言葉は学術的な定義が確立されていないが、カウンセリングで行動パターンを整理するために使われる。
あなたは、回避型愛着スタイルと回避依存症の違いをご存じでしょうか?
回避型愛着スタイルは略して「回避型」と呼ばれることもありますね。
愛着障害という言葉が広がるにつれて、よく目にするようになった言葉「回避型愛着スタイル」や「回避依存症」という言葉。
しかし、これらの言葉がどのように異なるのか、正確に理解している方は少ないのではないでしょうか。
今回は、カウンセラーでさえ混同することのあるこの2つの概念について、できる限り分かりやすく解説したいと思います。
「回避型愛着スタイル」と「回避依存症」を決定的に分けるものとは?
最初に、回避型愛着スタイルと回避依存症の決定的な違いについてお話しします。
「回避型愛着スタイル」の人は他人との距離を維持し、感情的な親密さを避ける傾向があります。
この特徴は
恋愛面だけでなく、人生のさまざまな場面、たとえば職場や友人関係
にも表れます。また、感情を抑え込むことが多いため、深い人間関係を築くことをあまり好みません。
一方で「回避依存症」は、相手に対して強く依存しながらも、親密になりすぎると急に距離を置くという矛盾した行動を繰り返すのが特徴です。
つまり回避型とは異なり、
「依存」と「回避」が絶えず交互に起こる
のです。
特に、この特徴は恋愛関係に限定される傾向があり、他の友人関係や仕事関係ではあまり見られないことが特徴です。
ここで押さえておきたいポイントは
- 回避型愛着スタイル:人生全般にわたる広範な回避傾向
- 回避依存症:ほぼ恋愛に限定される
になります。
「回避型愛着スタイル」とは?その特徴と背景
回避型愛着スタイルとは、心理学者ジョン・ボウルビィの「愛着理論」に基づく言葉です。
愛着理論を簡単に説明すると
幼少期における親との関係が、成人期の対人関係や恋愛に大きな影響を与える
という考え方になるでしょう。
先ほどお伝えしたように、回避型愛着スタイルの「回避」は、恋愛や親密な関係に限らず、職場や友人関係、家族関係など、あらゆる対人関係において広範に表れます。
もう少し具体的な特徴を見ていきましょう。ここでは回避型愛着スタイルの3つの特徴について触れていきます。
- 感情を表に出さない
- 独立や自立を重視し、人に弱みを見せない
- 人と親密になることを恐れる
順に解説していきます。
感情を表に出さない
回避型愛着スタイルの人は、幼少期に「感情を表現しても親から十分な反応が得られなかった経験」から、感情を抑えることを学んでしまいます。
感情を表に出さない癖は成人してからも続き、結果として、他人と感情的なやり取りをすることが苦手になります。
感情を表に出さないことで、他人から
「不思議な人」
などと言われたり、共感を得ることが難しくなりがちで「人間関係の中で孤立しやすい傾向」があります。
独立や自立を重視し、人に弱みを見せない
幼少期に「過度に自立を求められた経験」があると
という認識が強化され、他者に頼ることや弱みを見せることが難しくなります。
困難に直面しても他人に頼ることを避けるため、結果として「自分自身を追い込む状況」が生まれがちです。
人と親密になるのを恐れる
幼少期に愛情が十分に与えられなかったり「過剰にコントロールされた経験」があると、感情的な親密さそのものに恐怖を抱くことがあります。
親密になることが
- 支配
- 束縛
- 干渉
と同じ意味を持つようになり、親密な関係を避けるようになることがしばしば見られます。
以上、ここまでが簡単な回避型愛着スタイルの説明になります。
「回避依存症」とは?その特徴と背景
回避型愛着スタイルとは異なり回避依存症という言葉は恋愛に特化した「恋愛用語」です。
回避依存症は
依存的な関係を求める一方で、親密になりすぎるとその関係から距離を取ろうとする
といった矛盾した行動を繰り返すのが特徴です。
例えば、仲良くしていたと思えば急に音信不通にしたり、連絡が途絶えた後に急に付き合い始めの様に情熱的になるなど、恋人の心を乱す行動が多く見られます。
最初は相手を理想化しているため強く求めますが、時間が経つにつれて失望し、距離を置くようになります。
さらに、こうしたパターンは「音信不通」や「モラハラ」といった形でも表れ、相手との関係をコントロールしようとする「回避行動」として現れます。
更に詳しく回避依存症の特徴について知りたい方は以下の記事を参考にして下さい。
関連記事:『回避依存症』って?原因や特徴、タイプごとの性格について。元・回避依存症が徹底解説します回避型愛着スタイルと回避依存症の「自立性」の違い
回避型愛着スタイルは、他人と親密になることで感じる「感情的な痛み」を避けるために他者との距離を取ります。
つまりもう少し踏み込んで考えると、この行動の背景にあるのは
- 「自立性」
- 「独立性」
の強さとも言えるでしょう。
また、彼らは自らを守るためにあえて他者との親密な関係を避けようとし、それが一見「自立的」な行動として映ることもあります。
一方で、回避依存症の人は恋人と「過度な依存関係」を築くことが前提にあります。
つまり、彼らは「依存」と「親密さへの恐れ」という二つの相反する感情を常に持ち合わせているのです。
回避型とは異なり、回避依存症の人は自律性が極めて低く、他人との「依存関係」を通じて自分を満たそうとします。
「回避依存症」という言葉のあいまいさ
最後にいちカウンセラーとして、「回避依存症」という言葉の曖昧さについて触れておかなければなりません。
まず回避依存症という言葉は学術的に確立された用語ではありません。
そのため
カウンセラーによって解釈や適用に違いが生じやすく、一貫性に欠ける
といった致命的な弱点があります。
それにもかかわらず、なぜ私がこの言葉を多用しているのか気になった方もいるかもしれません。
それは回避依存症という言葉が
「クライアントの悩みを理解し、整理するための有用な枠組み」
として機能するからです。
もちろん、恋愛や人の心の問題には絶対的な正解というものはありません。、また、そもそも一つの言葉で人の行動や性格を当てはめること自体が、必ずしも適切であるとは限りません。
しかし、「回避依存症」という言葉を使うことで
依存と回避が繰り返される行動パターンを一つの言葉で表現できる
ため、あえて私はこの言葉を使い、情報発信をしています。
回避依存症という言葉を使う上での問題点
とはいえ、この言葉を用いることにはいくつかの問題点もあります。
その一つは、「回避依存症」というラベルに無理に当てはめてしまうことで、問題の本質を見失ってしまったり、解決から遠ざかってしまうリスクがあることです。
また
- 回避性パーソナリティ障害
- 自己愛性パーソナリティ障害
- 境界性パーソナリティ障害
など、精神障害の診断と混同されるリスクもあります。
私自身もカウンセリングの場でこれらの違いには十分に気を配っていますが、それでも完璧ではありません。
だからこそ、読者の皆さんにも強調したいのは、最初から
「彼は自己愛性パーソナリティ障害だ」
とラベリングするのではなく、さまざまな可能性を探りながら関係を考えてほしいということです。
記事のまとめ
- 回避型愛着スタイルは、感情的な距離を維持する傾向が強く、恋愛以外の対人関係でもその特徴が見られる。
- 回避依存症は、恋愛関係において依存と回避を繰り返し、親密さを恐れつつ依存するという矛盾した行動を取る。
- 「回避依存症」という言葉は学術的に確立されていない。行動パターンを整理するために有効だが、ラベリングに過度に依存しないよう、柔軟な視点で自分や相手の行動を理解することが大切。
今回、回避型愛着スタイルと回避依存症の違いについて詳しく解説しました。
人の心や行動は一つの言葉では捉えきれないほど複雑ですが、それでも理解を深めるための枠組みとして、これらの言葉は非常に有効です。
柔軟な視点を持ちながら、自分自身や大切な人との関係を考える際の参考にしていただければと思います。
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